高校生・大学生の皆さんへ2:関山研究室の魅力?

研究室を主催している本人が魅力とか言っても何だか自慢めいてしまい恐縮ですが、これまで我々は確かに世界的かつ独創的と言える研究成果を物性物理学・シンクロトロン放射分光の分野で挙げて国内外で受賞もしました。そして、そういった成果を、これからの若い人たちに還元すべく研究を通じた高等教育を行うことはこれからの日本・世界の為にも重要と素直に思うようになりました。その具体的な中身はこことかそことか、その背景を説明したページを見ていただくとして、ここでは大学進学を考えている高校生を読者と想定して、「関山研究室があることで大阪大学基礎工学部電子物理科学科 物性物理科学コースに進学することのメリット」を記載してみたいと思います。
  • 世界最先端の高エネルギー電子分光による量子物性研究
  •  本格的な研究は大学院入学後ですが、学部の卒業研究でもその一旦に触れることは可能です。関山の研究経歴を振り返っても2000年代の「高エネルギー高分解能バルク敏感光電子分光」はSPring-8という施設のおかげでもありますが、そこで新たな価値を創出しつつそれまで世界の他グループにできなかった実験を可能にした点で独創的だったと思います。これを皮切りに「軟X線3次元角度分解光電子分光」も含め軟X線励起(波長1〜2 nm)光電子分光を進めてきました。 また、それより一桁波長の短い(波長0.1〜0.2 nm)硬X線光電子分光も始めてましたが、ターニングポイントは関山が教授に昇任する2009年前後から開始した「偏光制御した直線偏光依存硬X線光電子分光」に世界で初めて成功したことです。 注)偏光とは、例えば水面を反射した光や(循環的使用ですが)偏光板を通り抜けた光に見られるように電場が一方向に向いた光ですが、これは目に見えない短い波長のX線でも同じように偏る性質を持ちえます(そもそも偏光性はシンクロトロン放射の特性の1つ)。これで光電子分光を行うと従来に加えて電子状態の軌道対称性が分かるという点で新たな価値を生み出せた、と後になると実感します。それをさらに発展させた「角度分解内殻光電子線二色性による局在軌道対称性の決定」は現時点(2019年)では世界的にも関山研でしか遂行できない実験技術です。
     このように、関山および関山研では
    他には容易に真似ができず価値ある新たな電子分光実験の開発と実践を進めてきました。よって「世界でオリジナルの実験・研究をした」ということを関山研で味わう事ができます。そこで、もしも「高エネルギー固体電子分光で手法まで含め独創的な研究に携わりたい」と思う人がいれば関山研のある阪大基礎工物性コースに進学がほぼ唯一の解(と言い切ると他から苦情が来るかもしれませんが)でしょう。
  • シンクロトロン放射及びX線を含めた光と電子の相互作用の物理を体系的に学ぶことが可能
  •  関山は物性コース学部3年次秋冬学期に専門科目として「光物理学特論」を担当しています。は目に見える存在でありながらその正体は必ずしも明確ではなく、長い研究の歴史があり物理学の中でも「ありふれてかつ魅力的」な存在かもしれません。この科目には光を対象として
  • シンクロトロン放射について放射部分はMaxwellの方程式からスキップせずに導出、かつ電子銃から分光器を経て単色された放射光が実験ステーションに届くまでの物理を殆ど省略せず線形加速器・挿入光源・回折格子分光・結晶分光・集光まで含め講義
  • 光と電子(一部はイオン)の相互作用による(複素)屈折率の波長依存性を赤外領域から(しばしば省略されがちな)X線領域まで統一的に講義
  • 後半では光を量子化し、内殻電子による光吸収や光電子過程も天下りではなく「電磁場中の電子の運動方程式」から出発して量子力学的な取扱いを講義
  • という特徴があります。こう書くとかなり盛りだくさんかもしれませんし計算量も多いのですが、代わりに
    電磁気学や量子力学との論理的な接続がしっかりしているだけでなく、途中で僅かですが幾何光学の話も(回折格子分光、集光のところで)出てくるしX線回折も結晶分光として扱います。最後には光を量子化して光電子分光も光学過程の一種としてフェルミの黄金律を経て説明します。およそ赤外線からX線にわたる幅広い波長領域の「光」に関する諸性質の大部分をこの講義科目で統一的かつ体系的に扱いますので、これについて来ることができた学生さんは式の導出まで含め「光についてほぼ理解した」と言える内容だと思います。
    可干渉性(コヒーレンス)は扱いませんが、その威力を発揮するレーザーを含めた講義は物性コース学部3年次春夏学期の芦田昌明教授による「光物理学基礎」で学べると思います。
     上記内容のそれぞれは、他大学の先生方による講義で学ぶことが可能だと思います。ただ、関山のこの講義ではX線も光の一種(これは研究者レベルでは当たり前な筈ですが、意識としてはX線を光と別物と捉えている方が研究者でも多いのが現状です)と捉え、波長によらずシームレスに光の性質を理解することが可能な点で特徴のある講義科目な気がします。他の大学でも独力で頑張れば可能ですが、阪大基礎工物性コースではこの光物理学特論1科目を真面目に受講すれば光の大部分について専門家に準じる水準で分かる点では特徴的とと思っています。

     以上は、関山および関山研究室が学部教育で関わる特徴です。勿論、人によっては「だから何?」という人もいると思います。ただ、物性物理科学コースは関山だけでなく、
    物性物理学における各分野で世界最先端の研究を進めておられる先生方がそれぞれに工夫をこらした学部教育を展開しています。勿論、電磁気学、量子力学、統計物理学、物質構造論や固体電子論に代表される固体物理の講義科目や基礎工学PBL、物性実験といった実験・実習科目も充実しています。高校で数学・物理・化学が好きで将来それを生かした専攻に進みたいと思っている高校生には、当物性コースは大変手応えもあり将来性も高い進学先だと思いますので、大学進学の際の参考にしてみてください。