研究内容のやさしい解説その0:光電子分光を知る為の予備知識


0−1.固体って何からできているの?

   

固体

液体

気体(見えない)


 この世の物質というのは「固体」「液体」「気体」のどれかの形態をとります。ではこれらの物質というのをどんどんかみ砕いていくとどうなっていくかというと、「原子」という単位になっていきます。この原子というのは色々な種類の物がありまして、これまでに110種類を越えるものが見つかっています。例えば水や氷(H2O)というのは2つの水素原子(H)と1つの酸素原子(O)から出来ています。また、鉄は鉄原子(Fe)から、金は金原子(Au)がそれぞれ集まったものです。日常生活で使われるプラスチックは主に炭素原子(C)と水素原子(H)が、人間、動物、木、植物等生命体はそれに加えて窒素原子(N)やリン原子(P)などが集まったものです。ちなみに二酸化炭素(CO2)というのは1つの炭素原子(C)と2つの酸素原子(O)から構成されます。さらにいうとガラスはケイ素という原子(Si)と酸素原子から構成されますが、このケイ素(Si、別名シリコン)というのは、殆どの電化製品やパソコンで使われる半導体の主成分です。いわば「産業のコメ」と言われるのはつきつめればSiなのです。このように、物質というのは1種類の原子から構成されることもあれば、複数の種類の原子から構成されることもあり、この世に様々な物があふれかえっているという訳です。

 では物質をどんどん細かくしていくと、原子とやらになるとして、その原子っていうのはどういう構造をしているのか?それを示したのが上図です。このように原子というのは中心にある原子核と、そのまわりをまわっている電子から構成されています。電子というのは「電気」の電がついているように、電気を帯びた粒子です。電気、もっと正確には電荷ですが、これには正と負(プラスとマイナス)の2種類があって、電子は負の電荷を持っています。これに対して原子核は正の電荷を持っています。正と負の電荷のペアというのはそれぞれ引きあう性質を持っているので電子は原子核のまわりをまわっている、という訳です。そしてこの電子が時にはあっちいったりこっちいったり、と場合によっては動き回る性質を利用して、日常生活で電気が使われているのです。

 1つの原子には原子核は1個しかありません。では電子はというと、それは原子によって異なります。例えば、水素原子には電子は1個しかありませんが、酸素原子には8個あります。なぜこうも違うのか、というとそれは原子核のキャラが違うためで、水素の原子核には1個分の電子に見あった分の正の電気(電荷)しか持っていないのに対して、酸素の原子核には8個分の電子に見あった正の電気(電荷)を持っているからです。そう、原子というのを遠くから眺めてみると電気的には正と負が打ち消しあって釣り合いが取れている(これを中性といいます)のです。 でも「それで本当に原子が安定した状態なのか?」というとそれは全くの別問題で、この電子というものは原子核と比べて非常に軽い(2000〜200000分の1の重さ)という事もあって動き回る事が多々あります。それがどうなっているのかは原子の種類にもよりますし、同じ原子でも別の原子と組合わさる事で電子の振舞いが大きく変わることもあります。私たちが研究している光電子分光を含む現代物理学の大きな分野である「物性物理」というのは、色々ある物質に対して、主にこの電子の振舞いを色々な方法で調べ、何故そのような振舞いをするのか、あるいは「こんな物質を開発したい」という時にどうすればよいのか、というのを調べる事が1つの大きな目的です。





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